母親が脳梗塞で倒れて、東京の我が家に連れてきた時はそんなに長く生きてくれないと思っていた。ほんの数ヶ月だろうと…だけどこれが生きも生きたり。4年間!!ほぼ毎日ブログに綴っていた。それをまとめたのがこのコミックエッセイです。在宅介護はいろんなものを犠牲にする。まず、介護する人の生活のリズム。夜中、何回も起こされ、満足な睡眠時間を与えてくれない。当初は睡眠不足でいつもモヤモヤ。昼間じっとしていると居眠りしてしまう。でも徐々に体が順応していく。夜中起こされてもすぐに寝付けるようになった。次に経済的な打撃。仕事が思うようにできない。営業も出来なくて、仕事が減っていく。うちの場合、奥さんが公務員だったので貯金を切り崩しながら、ある程度、やりくりできた。そしてやっぱり大きいのは介護でメンタルをやられる事。いくら血を分けた親といえども、24時間べったりだとさすがに爆発しそうになる。「たまには旅行に行って楽しみたい!」とか「他のきょうだいの協力も欲しいなあ!」とかそんなイライラを解消してくれたのがウチの奥さん。「母ちゃんが幸せだからいいじゃない」「田舎にいたらとっくに亡くなっているよ」いつも笑って気持ちの転換をしてくれた。そのおかげで介護も楽しいと思うようになり、母ちゃんは100歳まで長生きしてくれた。天寿を全うして、老衰という理想的な幕引き。だから亡くなってもボクはちっとも悲しくなかった。もちろんこれで介護から解放されたという安堵感もあったが、「母親を最期まで看取ることができた」という達成感。親の死に対して悔いがないというのは幸せだ。母親がボクに残したもの。目をつぶるとジワーっとくる母の温もり。そして時々突然やってくる腰の痛み。河野やし