どこにでもあるような街の、どこにでもあるような学校。どこにでもいるような母親と、どこにでもいるような先生。どこにでもあるようなありふれた関係、のはずだった。悪夢の’家庭訪問’までは――。平成17年10月11日、沢渡夫妻の主張「教諭によるいじめ」はすべて夫妻の’でっちあげ’であると証言した、教諭・杉谷誠とM市教育委員会に対して、損害賠償を求める訴えを起こした。教諭による’いじめ’および自殺強要が理由である。しかし、第1回口頭弁論において、全て夫妻の’でっちあげ’である、という杉谷の証言に始まり、予想をはるかに超える全容が明かされる。時はさかのぼり平成17年5月12日夜分、沢渡家を訪問した杉谷は、美月の不思議な気迫に呑まれ、帰宅を切り出せず――。