『月の恋人』は5つの短編で構成された物語集であり、そのうち2つを自身の体験に基づいた日記という体裁のフィクションとなっています。表題作や「心を込めて心を砕く話」も含めて、ポップな絵柄の中に苦味のある物語、少し肩透かしを喰らうようなウェットな話を収録しています。普段接する物語とは少し違う、少し入り組んでいたり余韻が残るような物語を読んでみたいという方は、ぜひ読んでいただければ何かしら心の琴線に引っかかるものがあるかなと思っておりますので、よろしければ一読いただけると幸いです。(作品紹介)『心を込めて心を砕く話』死んだらその骨が「円」となる世界の中で、あるケモミミの女の子が、円が持っている今世の「縁」を断ち切ってあげるためにそれを金槌で砕く風習を体験する話。『日記(タップ)』電源タップのコイル泣きの話です。『日記(まめぞう)』今まめぞうというオスのウサギを飼っているのですが、そのまめぞうに不眠を相談するという話です。『月の恋人』宇宙飛行士が正体不明の隕石に触れながら、かつて高校時代一緒に星を見ていた女友達との思い出に思いを馳せる話です。『月の妻』前述の「月の恋人」のエピローグと位置付けられる作品です。