都心近くにひっそりと佇む遊郭『籠月楼』。<br />そこでは毎夜、艶やかな襦袢姿の色子達が客の訪れを待っていた。<br />ある日の朝――色子の桃雛は、泊まり客の若い男と出会う。<br />その男は、木から落ちた鳥の雛を巣に戻そうとしていた。<br />まだ恋を知らぬ桃雛だったが、不思議と男に惹かれ、自ら望んで‘初めて’を捧げてしまう。<br />名を告げぬまま男と別れて10年――。<br />馴染み客の秘書として目の前に現れた伊佐原に、桃雛はかつての男の面影を重ねて…。<br />