嘆きの天使
――タマミは、いつも決まりきったセリフしかしゃべれない。
相手が期待していそうなリアクションをとる。
「友達」がいないと、世間から「人間」らしく思われないのでまったくノリの合わない周囲にムリして溶け込もうとする。
――だけど、最後にたった一度だけ’掟‘を破って心からやりたいことをした。
「自殺って悪いことだけど、私、もう生きていたくない!」――(マリアの肛門 第9話「自由への飛翔」より)こうあらねばならぬという世間の常識と、建前を巧く演技できない自分の姿との乖離と、こう思われたくないという視線恐怖の苦しみと。
「普通」ならここではこう思わないといけないという規範と、そう思えない自分の本音との隔絶と。
まっとうな生の場ではぎくしゃくする厄介者の心安らかな幸福はもはや死しかないのか。
1992年、24歳で自らの命を絶った伝説の漫画家、山田花子の非凡で非情な観察眼が冴え渡る傑作短編集、待望の電子化。
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