人は昔失ったものに囚われ過ぎる。<br />それ以前に得たものが沢山ある事を考えるべきかも知れない――。<br />不妊に悩み、結婚四年目にしてようやく出来た娘だった。<br />娘のために家を買った。<br />娘を中心に一日が回っていた。<br />初めて自分の足で歩いた時の事、初めてはしかにかかった時の事、娘の一挙手一投足に一喜一憂した4年間だった。<br />その娘が4歳で死んだ。<br />妻は笑顔を失い、夫は仕事と浮気に安息を求めた。<br />娘への愛が、愛し合う夫婦の仲を引き裂いてゆく…。<br />