かわいい子には、我が儘をさせよ――時は大正――舞台は東京、とある華族家の末娘・璋子(たまこ)が訳あって住まわされている別宅があった。<br />璋子のライフワークは、お世話係の宇於崎(うおざき)に無理難題を吹っかけて困らせること。<br />風邪を引いた璋子は、宇於崎が出かけてひとりになった別宅で、幼少期の暮らしを追懐する。<br />「望み」を持つことを知らなかったあの頃の彼女をときめかせたのは、外界との唯一のつながり、「本」だった。<br />