「…お前こそ、俺をなんだと思ってるんだ」縋るような獄本(ごくもと)の表情に夏目(なつめ)の心は大いに揺れた。<br />思い返せば映画化が決まってから、自分は獄本の必死のメッセージに気づくこともできず話を進めようとしていた。<br />おまけに芥川(あくたがわ)との関係も、獄本の意に沿わぬ形になってしまった…。<br />どうしよう、どうしたらいい?ぐるぐるとまとまらない考えのまま映画化の期日だけが迫る状況。<br />打ち合わせに向かった夏目は、そこである想いに気づく――…