重傷を負いながらのステージをもやり遂げ波乱のツアーを終えた矢代俊一は、実の父との至福の時を迎える。自分とはまったく感性の異なる実業家の家に生まれ育った矢代俊一は、家出同様にしてジャズの世界に入り、やがてモントルーのジャズフェスでの大成功をおさめてキャリアを重ねていった。しかし母親がいまわの際に言った言葉から、じつは彼が不義の子であったことを知る。しかも、その人物は国際的な名ピアニスト万里小路俊隆だった。邪教の脅威にさらされ、また彼を横恋慕する渥美公三の乱暴によって重傷を負うこととなった波乱の全国ツアーを終えた矢代俊一は、ついに実の父の家を訪ねて安らぎのひとときを過ごすのだった。矢代俊一シリーズ11巻。【著者】栗本薫1953年東京生まれ、2009年病没。1977年群像新人文学賞評論部門を、1978年江戸川乱歩賞を受賞して文壇デビュー。小説は栗本薫名義、評論などその他の活動は中島梓名義で発表する。正伝130巻、外伝21巻のグイン・サーガ・シリーズ、伊集院大介シリーズ、魔界水滸伝などのシリーズ作品をはじめとする小説のほか、評論、エッセイなど400点を越える著作が刊行された。また、ミュージカルを手掛けるほかジャズ・アルバムとして「THE LAST LIVE」がある。