俺たちは大事な約束を忘れていたよな。刑罰では拭いきれない加害者への憎しみ。二人きりの兄弟が選んだのは’仇討ち’だった――。 検事の兄、沖仲士の弟――人生を賭けた「大仕事」の、哀しくも美しい結末「当たり前の話だよ。俺がこの手であの男を殺して親父の仇を討つ」と言いながら机の引き出しの鍵を開けると、中から六連発のリボルバーを取り出してみせた。息を呑む俺に悪戯っぽく笑うと、「検事の役得でね。今まで百発は試させてもらったよ。お前の空手よりも心強いぜ」と手にしたものを翳して笑ってみせる兄貴を、俺はまじまじ見直していた。(『宿命』より) 鮮烈、圧巻、陶酔のハードボイルド円熟の筆致で描き出す「男の美学」。表題作と『流氷の町』の2編収録!!