誰にも知られてはならない――皇太子の子を宿したなんて。サリーはテレビ画面を見て凍りついた。間違いない。エドワードだわ。彼は婚約間近の皇太子だった! けれど、5週間前は違った――同じこのシンガポールの地で出会ったビジネスマンだったのに。サリーは出張中で、ホテルのプールで溺れかけたところを彼に助けられ、びしょ濡れで最上階のペントハウスに運ばれ、手厚い看護を受けた。あくまで紳士的に、優しく接してくれる美貌の彼に惹かれてしまい、彼も思いは同じで、一夜限りという同意のもと、情熱的な夜を過ごした。エドワードとサリー。ただ名前を教え合っただけで。でも今、再びこの地を訪れて彼の素性を知った。もう一度会って確かめたい。彼があのエドワードだと。おなかに宿る幼い命のことは伝えずに……。■『泣きぬれたシンデレラ』の関連作、ジェームスの妹サリーのロマンスをお届けします。エドワードには、たしかに政略結婚の相手がいました。彼が妊娠を知ったのと同時にマスコミにも嗅ぎつけられ、エドワードはサリーを豪華な別荘にかくまうことにしますが……。