ただひとつの書きかたを、年を重ねるにつれて辛抱強く成長、変化させてゆく、そういう書きかたに憧れながら、自分にはそれができないと自覚するようになったのは、この詩集に収められた作品を書くようになってからである。詩史、文学史というようなものに無関心で書き始めた私は、自分の書くものの縦のつらなりよりも、むしろ横のひろがりのほうに関心がある。後世をまつという気持ちは私にはなく、私はもっぱら同時代に受けたい一心で書いてきた。それも詩人仲間だけでなく、赤んぼうから年よりまで、日本語を母語とする人々すべてにおもしろがってもらえるような詩を書こうとしてきた。私にあるのは、ひどく性急な野心の如きものだろうか。だが、その野心を支えたのは、私自身ではない。