時を重ねた再会は、彼女に新しい名前、本来の名前をもたらすはずだホノルルのブックストア。巨大なショッピング・センターの中にあるその店の外側は冬の貿易風が降らせるどしゃぶりの雨だ。そのブック・ストアで劇的な再会が起きる。2人は10年ぶりの再会を喜び、男は女の家に招かれ、同居の女性と息子にも紹介され、やがてその息子の姿にかつての自分を重ね、しばし痛切な思い出にひたる。しかし、10年前は10年前、今は今だ。彼はもう大人である。だから関係も、変わっていい。今こそ彼女の名を、昔とは違ってハッキリと声に出すべき時だ。【著者】片岡義男1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。