この戦いが無限に続くことをぼくは願っている。麻薬の罠にはまり、バリ島で逮捕された画家、哲郎。パリから帰国し、兄の逮捕を知ったカヲルはひとり、バリ島へ飛ぶ。不慣れなアジアの混沌の中で、果たして妹は兄を救うことができるのだろうか.....。交錯する生と死、西欧とアジア、絶望と救済。バリ島の濃密な空気の中で繰り広げられる舞踏劇、魔女ランダと怪獣バロンの戦いは永遠に続く。真の救いとは何かを問いかける傑作長編小説。毎日出版文化賞受賞作。【著者】池澤夏樹:1945年北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。以後多くの旅を重ね、3年をギリシャで、10年を沖縄で、5年をフランスで過ごして、今は札幌在住。1987年『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』『花を運ぶ妹』『静かな大地』『キップをなくして』『カデナ』『アトミック・ボックス』など。自然と人間の関係について明晰な思索を重ね、数々の作品を生む。2014年末より「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」全30巻の刊行を開始。