あの夏、私たちは4人だけの分隊で闘った。沖縄カデナ基地から北ベトナムへ飛び、爆弾の雨を降らせる巨大爆撃機B-52。その攻撃を無力化するため、基地の内と外を結ぶ小さなスパイ組織があった――。ベトナム戦争末期の沖縄を舞台に、戦争という抗いがたい現実に抗おうとするごくふつうの人たちの果敢な姿を、沖縄戦後史を通して描きだす。著者の沖縄在住十余年の思索と経験のすべてを注ぎ込んだ傑作長篇小説。【著者】池澤夏樹:作家。1945年北海道帯広市に生まれる。小学校から後は東京育ち。以後、多くの旅を重ね、3年をギリシャで、10年を沖縄で、5年をフランスで過ごして、今は札幌在住。1987年に『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞。その後の作品に『マシアス・ギリの失脚』、『花を運ぶ妹』、『静かな大地』、『キップをなくして』、『カデナ』など。東北大震災に関わる著作に長篇エッセー『春を恨んだりはしない』と小説『双頭の船』がある。最新作は小説『アトミック・ボックス』。2011年に完結した『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』に続いて、2014年末からは『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集』を刊行。