滅びゆくイスラム帝国の王の’貢ぎ物’として連行された美しい少年兵の叫びが奇跡を起こす。舞台は、17世紀初頭、最後の輝きを見せるオスマン帝国。征服されたキリスト教国から、’貢ぎ物’のように王(スルタン)のもとへ連行された三人の少年たち。強制的に母国語を奪われ、イスラム教徒へと改宗させられながらも、故郷への帰還を諦めない日々――。宦官による王の暗殺計画、側近兵の反乱など、内部から崩壊しつつあったオスマン帝国の終焉に、少年兵は巻き込まれていく。同時に進行する物語の、もうひとつの舞台は、1915年、第一次世界大戦中のドイツ帝国海軍・Uボート。与えられた使命は、連合国軍の通商船の破壊。無差別攻撃を続けても、戦況は悪化し続けた。「Uボートは、一隻たりとも敵の手に渡してはならぬ。戦闘能力を失った艦は自沈せよ」機密を守るための’掟’に従って、敵艦の攻撃を受けたUボートを自沈させ、イギリス軍の捕虜となったドイツ士官捕虜を救出する極秘の作戦が発動した。敵の機雷網や爆雷を潜り抜け、決死の作戦を完遂できるか――。幻想小説の女王が紡ぐ、’数奇な運命’に翻弄された美少年たちの物語。