社会人二年目、丸印出版の企画営業部(雑誌広告担当)に勤める西富(ルビ:にしとみ)みのりは、ノルマに追われる日々を送っていた。休日の外回り中、雨宿りのために偶然立ち寄った湘南の青果店『フジミ青果』で、みのりは〈野菜嫌い〉の店主・亮二(ルビ:りょうじ)と出会う。その店は、一見ごく普通の青果店だが、実は野菜も果物も売っていない「青果のコンフィチュール」専門店だった。試食をさせてもらったみのりは、そのおいしさに感動すると同時に、このお店をぜひ、自分の担当するグルメ雑誌で紹介したいと強く思う。そんな話を切り出したみのりに、それまでの優しそうな表情を一変させた亮二は「帰れ!」と一喝するのだが――。失敗続きの出版社女子と、野菜嫌いの青果店男子。湘南で彼らが手にしたのは、人生のしあわせな味(野菜風味)。