いずれも作者ならではの独特な味わいを持つ短編集です。・エロティックでちょっと不気味で美しい不思議なサスペンス短編『光を纏う女』(『月刊群雛』に掲載され、好評を博した作品です)金糸銀糸を纏う女が、俺を誘惑していた。ダブルオーセブンのゴールド・フィンガーで見たような金箔まみれではない、有機的ななまめかしさを感じさせる不思議な光りかただった。まさに、肉体に直接刺繍を施したように、女の肢体はキラキラとしなやかに煌めき、揺らめいていた。そうだ、間違いがなかった。女は俺を、誘惑しているのだ。俺は…… 続きは本編にて!・シュールレアリスム的な掌編『波』砂浜を歩く私の足下には白く泡立った波が渦巻いて、私の角張ったかかとをさらおうとしていました。私は沖へ向かって、少しずつ歩いていたのです。黒っぽい重い砂に少しだけつま先をめり込ませながら、私は歩いていました。数歩進んだとき、私は感じました。ゆるゆると動く水の屈折を通して見える私のゆがんだ足先が、波のその下へと抜けていたことを。その下? その下は…… 続きは本編にて!・SFミステリー風味の短編『瞳』飛べ! 無理だ! 曲がれ! 滑るな! 転ぶなアアッ!真っ暗だ、真っ暗じゃないが、真っ暗だ!目が合っただけだろう、いや、目すら合ってないだろう、なんなんだ、この男、いや、男かどうかも分からない。サングラスをしてた、帽子を被ってた、俺を見てた、そうだ、俺を見てた! なんとも、スリリングな始まり方ではありませんか! 続きは、本編にて!