まだ「何者」にもなれない「誰か」へ――。家に猫がいる者ならたいてい「うちの猫は特別だ」という。だが彼とともにいた猫は本当に特別だった。九年間、小説を書くときにはいつもそばにその猫がいた。その猫がいなければ小説なんて書けなかった。彼は猫を飼っていたわけではなかった。ただ猫とともに暮らしていた。――本文より抜粋これは石川布団という作家と、人語を解す「先生」と呼ばれる不思議な猫とがつむぎ合う苦悩の日々。企画のボツ、原稿へのダメ出し、打ち切り、他社への持ち込みetc...様々な挫折と障害に揉まれながらも、布団は小説を書き続ける。時には読者に励まされ、時には作家仲間に叱咤され、ひとつひとつの出来事に、一喜一憂していきながら、素直に、愚直に、丁寧に、時にくじけて「先生」に優しく厳しく叱咤激励されながら――。これは売れないライトノベル作家と「先生」とが紡ぎ合う、己が望む「何か」にまだ辿り着かぬ人々へのエール。優しく、そして暖かな執筆譚。カクヨムで話題を呼んだ、奇才・石川博品の同名短編小説を、大幅加筆修正した完全版。イラストは『バッカーノ!』『異世界食堂』など、各所で活躍中の人気イラストレーター・エナミカツミ。※「ガ報」付き!※ガガガ10周年電子特典!シリーズ既刊すべてのカバーイラスト付き!※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。