大坂商人、柳生一族の陰謀に巻き込まれる!時は寛永十三年――江戸城黒書院に呼び出された、惣目付を務める柳生但馬守宗矩。上段の間の襖が開くと、老中の堀田加賀守より、「役目に奨励をもって、四千石を加増する」との旨が伝えられた。本禄の六千石と合わせて、ついに一万石となり、晴れて大名となった柳生家。だが、宗矩の顔は沈んでいた。大名を監察する惣目付が、大名になっては都合が悪いためだ。案の定、宗矩は即日惣目付を解かれ、監察される側に回されてしまう。惣目付時代に買った恨みから、痛くもない腹まで探られてはかなわない。なにしろ旗本から大名になれば、典令や家政が大きく変わるため、隙を生みやすいのだ。一族最大の危機から逃れるべく、策を講じなければならなくなった宗矩は、なかでも武士が苦手とする金勘定が危ういと考え、ある秘策を思いつく。なんと、大坂一と言われる唐物問屋淡海屋七右衛門の孫である一夜を召し出すという。いったい柳生家と一夜は、どんな関わりがあるのか?武士となった一夜に、宗矩の嫡男である十兵衛は、柳生家の者として剣術を身につけよと新陰流を指南するが……。果たして一夜は柳生家を救えるのか?痛快時代小説シリーズ第一弾!