「世の中ってのはな、ありえんことがありえるに転じるなんざ、珍しくねえんだぜ」小舞六万石が大火に見舞われた。山河豊かで災害も少ない土地で、城下の半分に迫る町が焼け落ちたことで、人々は混乱に陥った。筆頭家老の後嗣である樫井透馬は、執政会議で一刻も早く救済策を講じることを主張するが、前例主義に凝り固まった藩の上層部は有効な策を講じることができない。苛立ちが募る透馬は、少年の頃から剣を通じて身分を友情をはぐくみ、今は側近として取り立てている新里正近、山坂半四郎と共に人々の救済に乗り出す。一方で透馬たちが独自に動くうち、この大火事がただの失火ではないのではないか、という疑いが芽生える。さらに藩政の主導権を巡る政争も巻き起こり……。江戸を遠く離れた小国・小舞藩(おまいはん)を舞台に、少年剣士たちの青春時代を描いた『火群(ほむら)のごとく』は、著者の時代小説の中では初めて少年を主人公にした作品でもあった。『火群のごとく』『飛雲のごとく』に続く、少年剣士たちの友情と成長を描く青春時代小説第三弾。