西丸書院番組頭を務める立原家の娘、志津乃には、決して忘れることのできない男がいた。<br />かつての許婚の坂木蒼馬は、西丸書院番士であったが、徳川家治の嗣子、家基の死を切っ掛けに突如出奔したのだ。<br />彼を忘れられずにいる志津乃に対し、蒼馬の友人だった男は、蒼馬が家基の暗殺を疑われていることを告げるのだった――。<br />蒼馬が出奔した真相を知るため、志津乃は彼を捜す決意をする。<br />意外な真相が胸を打つ、傑作時代小説。<br />