夏の陰
運送会社のドライバーとして働く倉内岳は、卓越した剣道の実力を持ちながら、公式戦にはほとんど出場したことがなかった。
岳の父である浅寄准吾は、15年前、別居中だった岳と母の住むアパートに立てこもり、実の息子である岳を人質にとった。
警察との膠着状態が続いた末、浅寄は機動隊のひとりを拳銃で射殺し、その後自殺する。
世間から隠れるように生きる岳だったが、自分を剣道の道に引き入れてくれた恩人の柴田の願いを聞き入れ、一度だけ全日本剣道選手権の京都予選に出場することを決意する。
予選会の日、いかんなく実力を発揮し決勝に進出した岳の前に、一人の男が立ちはだかる。
辰野和馬、彼こそが岳の父親が撃ち殺した機動隊員の一人息子だった。
「死」を抱えて生きてきた者同士、宿命の戦いが始まる――。
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