「私の筆跡にやや乱れが見えるとしたら、それはバルタザールが左手で飲み、私が右手で書いているからだ」1906年、ウィーンの公爵家に生まれたメルヒオールとバルタザール。<br />しかし二つの心に用意された体は一つだった。<br />放蕩の果てに年若い義母との恋に破れた彼らは酒に溺れ、ウィーンを去る。<br />やがてナチスに目を付けられ、砂漠の果てに追い詰められた二人は――。<br />双子の貴族が綴る、転落の遍歴。<br />世界レベルのデビュー作。<br />解説 石井千湖