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やみ窓

2年前に結婚し、夫と死別した柚子は昼間はコールセンターのシフト制で働くフリーターだ。
義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。
柚子が味わった地獄は、別の形となって続いていた。
それは何の前触れもなく突然やってくる異界のものたちとの闇の取引だ。
いつ蹂躙されるともしれない危険と隣り合わせだが、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子なのであった……。
(「やみ窓」) 月蝕の夜、「かみさん……」土の匂いのする風が吹き、野分の後のように割れた叢に一人の娘が立っていた。
訛りがきつく何をしゃべっているか聞き取れないが、柚子を祈り、崇めていることが分かった。
ある夜、娘は手織りの素朴な反物を持ってきた。
その反物はネットオークションで高額な値が付き……。
そんなとき団地で出会った老婦人の千代は、ネットオークションで売り出した布と同じ柄の着物を持っていた のだ。
その織物にはある呪われた伝説があった……。
(「やみ織」) ほか、亡き夫の死因が徐々に明らかにされ、夢と現の境界があいまいになっていく眩暈を描いた「やみ児」、そして連作中、唯一異界の者の視点で描いた「祠の灯り」でついに物語は大団円に。
色気と湿気のある筆致で細部まで幻想と現実のあわいを描き、地獄という恐怖と快楽に迫った傑作。




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