その少年に目が留まった理由は、ただ一つだった。<br />こぼれ落ちる涙を拭おうともせずに、立ち尽くしていたからだ。<br />それもホラー映画の並ぶ棚の前で。<br />しかも毎日。<br />――ある事件がきっかけで、職を辞した元刑事の須賀原は、死者が見えるという少年・明生と、ふとした縁で知りあった。<br />互いに人目を避けて生きてきた二人。<br />孤独な魂は惹かれ合い、手を結んだ。<br />須賀原と明生は、様々な事情でこの世に留まる死者たちの未練と謎を解き明かしていく。<br />