田沼意次の密命を帯びて世の治安に務める安川市兵衛の配下壮志郎は、いまはその使命も忘れ、ひたすら盗賊の頭目を追っていた。<br />その頭目は自らに火盗改の手が伸びれば、ある子どもを殺すという。<br />そして、火盗改の手が頭目に届く寸前だった。<br />