経済界の若き俊英・九鬼は、自ら興した企業グループの順調な成長とは裏腹に、プライベート面も補佐する秘書の御巫(みかなぎ)に苛立ちを抱き続けていた。<br />献身的ではあるが常に無表情で冷淡な御巫の態度は、学生時代に見せていた九鬼への恋情をまったく忘れたかのようだったが、御巫もまた、九鬼のそばにいる苦しさは増すばかりだった。<br />二人のあいだに高まる摩擦熱は、御巫のある申し出で限界を迎え――。<br />