つかの間千草苑を離れ、亡き妻との思い出のある地へと旅立つ祖父の木太郎(もくたろう)。<br />黄昏時、波打ち際に佇(たたず)む彼に囁きかけるものは(「浜辺にて」)。<br />若さ故の迷いから、将来を見失ったりら子が、古い楠の群れに守られた山で、奇妙な運命を辿った親戚と出会う(「鎮守の森」)。<br />ひとと花、植物たちの思いが交錯する物語。<br />花咲家のひとびとが存在するとき、そこに優しい奇跡が起きる。<br />書下し連作短篇全六話。<br />