上屋敷で異変があり、新蔵は越後岩船藩の酒匂近江守忠純の中屋敷に向かった。<br />抱えた梯子をかけ、一気に庭に忍び込み、雨戸を叩く。<br />応じた侍女のたきのは志保姫をともなっていた。<br />主人の須川幾一郎に異変が起きたときには姫を国許につれ戻す手立てになっていた。<br />江戸表にも国許派のものがいるのだ。<br />追っ手をかわして、姫を連れて戻れるのか! 街道筋には見張りがいる。<br />巡礼の親子に紛して旅は始まった。<br />名手が描くエンタテイメント時代長篇。<br />