おかんヶ茶屋で浪人の兵庫助が飲んでいると、芸者の駒乃がやってきた。<br />二人は夫婦の形こそ取っていないものの、ともにかけがえのない存在。<br />駒乃は連れてきた同年配の女の話を聞いてくれと頼み込む。<br />女は駒乃と同じ芸者だったが、七年前、仕事一筋の職人に嫁いでいた。<br />一昨日、かつての馴染客と出会(でくわ)し、芝居見物に誘われたという。<br />そしてその後……女は泣き出しそうな顔で続けた。<br />