織田家の出頭人のひとり惟任日向守光秀の裡に兆した翳(かげ)りに気づいた乱丸は、光秀とイエズス会の動向を探りはじめていた。<br />乱丸は安土城下屈指の女郎屋を営む謎の女キリシタン・アンナにイエズス会の内情を探らせるとともに、彼女に思いをかけていたのだ。<br />もとより主君への忠誠とアンナへの思いは比べるべくもなかったが、運命の日の朝、乱丸は自らの存念を問われることになる……。<br />