わたしは特別。<br />みんなとは違う。<br />何者かになるべき存在。<br />幼い頃から、今井花梨(かりん)はそう思い込んできた。<br />三十二歳になった今は、もう、いくら何でもそんなふうには考えない。<br />考えられない。<br />それでも、「人に注目されたい」「みんなから羨ましがられたい」という強迫的な願望から、どうしても逃れられずにいる……。<br />そんな花梨が陥った罠は、あまりにもエロティックな匂いに満ち満ちていた。<br />