終電車が走り去った駅前のタクシー乗場。<br />若い女が、ドアを開けた浜崎の車に駆け寄ってきた。<br />おかしな女であった。<br />助手席に坐りたい、というのだ。<br />いくらか酒に酔ってもいるらしい。<br />女のにおいは、若いタクシー運転手の心をわずかにはずませた。<br />ライトを消し、エンジンを切る。<br />女の胸が開き、ブラジャーのひもがすべり落ちる。<br />「前開きよ、便利でしょ」女が囁いた……。<br />表題作ほか7篇を収めた官能サスペンス。<br />