「田処銀吉」の名が容疑線上に挙がった時、佐伯警部補は一瞬鳩尾の奥に鈍痛に似た圧迫感を覚えた。<br />田処はひと月前の「OL暴行未遂事件」の容疑者だったからだ。<br />あらゆる要素が彼のクロを示していたが、結果は捜査本部の黒星。<br />そして今度はOL殺人事件で再び彼の名が挙がったのだ。<br />もう誤認逮捕はしたくない。<br />しかし、客観情況はクロを示している――(表題作)。<br />多彩なテーマを鮮やかに描く傑作短篇集。<br />