五年前の夏、北国の街・幸福で、駅前の土産物屋の夫婦とそこで働くわたしを立会人にして、あわただしく挙式した男女があった。<br />やがて芸能プロの公金を拐帯して、所属歌手と逃亡した男の記事が新聞に載ったという。<br />その男女を探し、幸福駅の廃線前に再訪させて欲しい。<br />それが土産物屋のおかみの依頼だった。<br />わたしは札幌、石狩へと、男の足跡を追った(表題作)。<br />真摯に生きる人間群像を描く珠玉の作品集。<br />