雨の降る火曜日、二十三歳の花村理絵は二年前から続いていた上司との関係に終止符を打った。<br />会社にも退職願を出した。<br />長年住み慣れた家も出た。<br />それもこれも、自らの過去を消して、死んだ養父母の復讐を果たすためだった。<br />医は算術を地で行く小田桐病院長の長男・哲也を誘拐し、身代金を要求するのだ。<br />哲也は二十一歳。<br />女の理絵に果たして誘拐は可能か?