東海道の要所、箱根山。<br />両親と兄弟を流行り風邪で亡くしたおさきは、引き取られた叔母にこき使われ、急峻を登る旅人の荷を運び日銭を稼いでいる。<br />ある日、人探しのため西へ赴くという若侍に、おさきは界隈の案内を頼まれる。<br />旅人は先を急ぐものだが、侍はここ数日この坂にとどまっていた。<br />関越えをためらう理由は……(表題作)。<br />東海道を行き交う人々の喜怒哀楽を静謐な筆致で描く連作集。<br />