奉公してから十五年、ようやく自分の店を持つことになった料理人の伴次。<br />店を持ったら女手が必要になる。<br />そろそろ女房を持ってもいいのでは──その時、伴次に苦い思いが湧いた。<br />七年前、一緒になるという約束を破り、他の男と所帯を持ったおつな。<br />だが男に騙され、女郎屋に売られたあげく体をこわして死んだのだ……。<br />己の腕を頼りに懸命に生きる職人の姿を描いた傑作時代小説集。<br />(文庫オリジナル)