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江戸の音が聞こえる。
光がみえる。
花火で織りなす人生模様。
「祝言は挙げられない」簪職人のおりよは、突然許婚の新之助にそう告げられた。
理由はなんとなく思い当たる。
新之助は形がよく、おりよは目が見えないから。
二人で歩いていると耳の後ろが熱くなる。
女たちの視線が痛い。
どうして私だけこんなことに――。
悔しさを押し殺し、手に残る感覚を頼りに仕事に没頭するおりよだったが……(「闇に咲く」)。
物語の舞台は愛知、山梨、長崎、東京、新潟、そして愛知へ。
のろし、弔い、には意味があるように、花火から生まれる時代小説もある。
音をテーマにした五感に響く物語。
遊女、船問屋、紙問屋、簪職人、花火師、旅籠屋……市井の人情を掬い取る、珠玉の時代小説。




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