大正も半ば過ぎの浅草。<br />木彫りで土産物の凌雲閣を作っては細々と暮らす少年純吾の部屋には、原寸大の己が一物の置物が飾られていた。<br />小刀の稽古のために、いちばん手近でおなじみの膨張時の姿かたちを彫ってみたのだ。<br />なんと、すると一物様のご利益か、突如開けた女運。<br />牛鍋屋の可憐な仲居、新時代のバス車掌などなど若棒の縮む暇なし。<br />今夜も一物様に手を合わせる純吾だったが…。<br />