ジャン=ジャックの自意識の場合<新装版>
一九六八年、日本人青年医師に、ルソーの魂が降臨した。
彼は『エミール』の理想を実現すべく、理想の子供を育てることを決意し、孤児院を創設する。
集められた子供たちは、’世界の救い主’を作り出すための、実験体であった…。
天使が舞い、混沌が支配し、血と精液にまみれた溟い幻想が憩う、濃密な作品世界。
全く新しい才能の誕生! 第8回日本SF新人賞受賞作品。
人々は、今あるこの世界が、根底から作り変えられることを望んでいるんだ。
いつの時代もそうだった。
しかし、それは容易なことではない。
だから、必要とされるのは、現状との闘いから変化が勝ち取られることではなく、現状を作り出した源にまで遡って作り変えられることだ。
地下の王国が、父たちの歴史を飲み込んでしまう、そんな矛盾した革命だ。
気づかぬうちに起源を置き換えてしまう。
闘い自体が無力化されることを望んでいるのだ。
それができるのは、ただ一人の子供だけだ。
その子は子にして親なんだ。
天使が巨人を産み、巨人が世界を産んだように。
子孫にして父祖、結果にして原因、その両者を結ぶものだ。
その子は、やがて《世界の救い主》になるだろう。
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