菊枕は頭痛持ちにきくというので先祖が植えた菊が咲き、花を摘み始める頃、妹ができた。<br />日野小太郎は五百石の祐筆の嫡男だ。<br />赤い頬の妹を’喜知次’と呼んだ。<br />友人の牛尾台助の父は郡方で、百姓の動き不穏のため、帰宅が遅い。<br />少年の日々に陰を落とすのは、権力を巡る派閥闘争だった。<br />幼なじみの鈴木猪平の父親が暗殺される。<br />武士として藩政改革に目覚めた小太郎の成長に、猪平が心に秘めた敵討ちと喜知次への恋心を絡めて、清冽に描く傑作時代小説。<br />