狂うてよいか。<br />女院が義清に囁いた。<br />狂ってしまったのは義清の方であった。<br />その晩のことに感情のすべてを支配されている。<br />もう、我慢が利かない、また逢うしかない。<br />しかし女院は言う。<br />あきらめよ、もう、逢わぬ……。<br />義清は絶望の中、こみあげてくる熱いものにまかせ、鳥羽上皇の御前で十首の歌を詠み、書きあげた。<br />自分がさっきまでとは別の人間になってしまったことを、義清は悟っていた。<br />著者渾身の大河伝奇絵巻、第二巻!