龍の袖
北辰一刀流、千葉道場の主定吉の娘として生まれた佐那は十代にして免許皆伝、その美貌も相まって「千葉の鬼小町」と呼ばれていた。
ある日、佐那が道場に行くといきなり手合わせを申し込まれた。
土佐の坂本龍馬と名乗ったその男は、日本だけでなく世界を見据える広い視野を持っていた。
そんな龍馬に佐那は次第に惹かれていく。
龍馬もまた佐那に想いを寄せ、二人は許嫁として互いの家族も認める存在となった。
京都へ赴く龍馬のために佐那は坂本家の桔梗紋入りの袷を仕立てるが、龍馬はそれに袖を通すことなく非業の死を遂げる。
悲しみの中、佐那は袷の右袖をほどき、龍馬の形見とした――。
「私の人生は、この袖に翻弄され、この袖に泣き、この袖に守られてきた――」大政奉還後の日本の道筋を作るため奔走した坂本龍馬。
その許婚として龍馬を待ち続けた千葉佐那。
運命に翻弄された二人の愛の物語。
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