「上州無宿の、石神の伊八郎って野郎を叩っ斬ってくれ」一宿一飯の恩義のある親分の頼みで、羽黒(はぐろ)の源太、別所の弁蔵の二人は中仙道の旅に出た。<br />親分のひとり娘お光(みつ)が、伊八郎に手籠(てご)めにされ、連れ去られたのだという。<br />……事件の意外な展開と、意表を衝(つ)く結末。<br />虚無的で孤独な旅鴉たちを、綿密な時代考証と推理小説的手法で、みごとに描く傑作股旅(またたび)小説集。<br />(『血しぶきに煙る信州路』改題)