映画がまだ輝いていた頃。<br />雄さんは故郷を捨て東京へ飛び出した。<br />しかし――歳月は流れる。<br />銀幕への夢に破れ、病んだ彼は、生地に戻り死を待つのみだった。<br />一言だけセリフを貰った一本の映画。<br />人生の最後に、もう一度、雄さんに夢(シネマ)を見せようと、小学校三年の私は幻の映画を探しはじめる(「ラストシネマ」)。<br />傑作と名高い掌編「中村正太郎さんのこと」を併録。<br />