裏街道を歩く者たち、追われている者、秘密の旅をする者、無宿人、それに女連れの旅人。<br />下総無宿の北風の伊三郎もそんな一人だった。<br />必殺の技、片目隠しの突きが空気を裂くとき、北風の音が聞こえるという。<br />渡世の義理で用心棒を引き受けた伊三郎は、密命を帯びる武家の兄妹を守って、江戸まで五百三十キロ、敵がひしめく中仙道をひた走った……。<br />