この文庫に収めた短編のいくつかは、書けなかった事件の背景をベースにしている。<br />主人公は、人生の迷宮に踏み込んだ女性たちばかりである。<br />物語の状況設定にまさかと思われるものもあるだろうが、それでも小説の方が現実よりおとなしい。<br />(略) 彼女たちのしたたかさ、裏にある寂しさ、貪欲さ、好色さなど、本書の主人公にちりばめたつもりである。<br />〔「あとがき」より〕