江戸指物師(えどさしものし)・橋上清次は、嫁ぐ娘のために姫鏡台(ひめきょうだい)を造っていた。<br />ほぼ完成しているそれが仕上げられることはない。<br />娘は手の届かないところへ行ってしまったのだから……。<br />思い出に浸(ひた)る日々を送る彼の心の糧(かて)は、泪坂の住人たちとの交流だった。<br />失意にくれながらも、清次はある決意を心に秘めていた――。<br />父と娘の深い絆が胸を打つ、優しく切ない「奇蹟の物語」。<br />